信頼されること、愛されること、いつもの鉄道であること―
株式会社セントラルエクスプレスライン

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□コラム『開業へ向けて』(3)

■長い道のり
・路線の確認
 浜松に構えられた事務室に赴任した高岡はまず、同じように赴任してきた開業準備室の室員とともに車に乗り、当該の廃線の状態を見て回ることにした。これから、何をすればいいのかを、とにかく自分の目で見ることが大切だと思っていたからだ。出来ることなら、線路の上を軌道自転車などを持ってきて、実際に軌道を走るほうが大切なのだと思ったのだが、流石にそれは無理と判断したため、まずは軌道の周りを見ることになったのだ。
 廃線跡は、静都浜松駅付近から始まり、愛知県、岐阜県、滋賀県、京都府…と長い距離が続いている。一部分に関しては高架橋や踏切が撤去されており、崩壊する危険性の高くなった駅舎は取り壊されていた。既に再起の見込みが立たなくなった頃には、道路にかかる部分の高架橋や踏切を撤去する話となり、正式に廃止となった地点で工事が行われていたのである。路盤は残っているとはいえ、そこに1はなく、0からのスタートだと、開業準備に取り掛かることになった一同は実感させられたのであった。
 車で確認した後、今度はヘリコプターをチャーターしてもらい、空撮によって残っている線路の状態を見ることとした。ただ、それでも0から1になることはなく、本当に0からのスタートになることを覚悟しなければいけなかった。

・とりあえずの開業区間の策定
 全ての区間を見た結果、全ての線区を再開業させるのは無理と判断している。まずは比較的近場の線路である、静都浜松から岡山までの区間を開業させることとした。計画に関しては、京都を境に2路線へと分けて、それぞれに管理区を設けた上で路線の復旧工事や駅舎などの建設作業に着手することとした。

■建設工事の発注
・再建設が必要な線区の工事
 道路などを跨ぐ箇所で崩壊する危険のあった箇所を既に取り壊してあった区間に関して、高架橋などの耐震検査及び必要箇所の改良工事を実施。

・新しい駅舎の建設
 廃墟化して崩壊しそうになっていた駅舎を取り壊した駅は、業務再開に当たって、新しい駅舎を建設しなければならなかった。

・一時段階でのあいさつ回り及び会議によって策定された新駅建設
 地元の要望「駅を作ってほしい」
 地元自治体「我々も利用できるように新しく駅を設けていただけるのであれば、補助金を出す準備があります。」
 路線修理には莫大な額がかかり、その資金を集めるのには自治体の協力も必要不可欠となる。その中で、自治体が補助金を、沿線企業が資金を出す条件に『新駅建設』というものがある。近くに鉄道が走っていても、最寄の駅が離れていて使いにくい、逆に駅があれば便利になる、高岡らが現状把握のために視察した瀬路線の沿線住民からは、この路線復旧計画に際して近くに駅を建設してほしいという要望が寄せられることになる。
 また、工事を行う旨の説明を沿線住民や役所などへ説明に行った際にも、同じような新駅誘致の声を多く聞くようになる。そして、自治体からは駅を作る見返りとして補助金を、沿線企業からは資金などどを提供してくれるというのである。そういったものは会社としてはのどから手が出るほどほしいが、その要望に答え続けると、その分、駅を多く作らなければならなくなる。
 まずは、駅を設置するとして、妥当な位置を地元自治体や沿線企業とで調整して決めておき、後で社内会議によって決定することにした。当該線区の一部の区間は駅が少なく、その分利用客が増えなかったという面があったのではないかと思う反面、出来るだけ列車の速達性を考慮に入れると、多すぎず少なすぎず…適当な新設数を模索しなければならなかった。目の前にある補助金や、提供してもらえるという資金の反面、確実に駅を新設して集客を見込める場所を選ぶという作業は困難を極めていた。
 結果として、中部高速線(浜松〜京都)で4駅、関西高速線(京都〜岡山)で15駅、合計19駅を新設することとなった。後のことを踏まえたら、これで妥当な数かなと、最終的に決まったよう。19の新駅建設予定地の沿線自治体や沿線企業には挨拶をして回り、用地を確保した上で、建設工事に着手した。
 この用地は当初、駅施設の土台部分をある程度建設の後、資材搬入・保管場所や工事車両の駐車スペースとして利用し、その部分の路線が完成した後で駅建設に着手した。駅施設及び路線全ての建設が完了した区間より開業することで話を進み、新駅建設は、この計画に沿って実施し、路線と共に駅も開業していった。

■路線の全面的な検査実施
・計画上では、各路線が暫定的な形で1つの線路でつながった後、検査用車両を用いての軌道検測(軌道上を走行できる自動車に検査機器を積んで検測)などを行うこととしていた。しかし、方針が変わって復旧工事完了区間より順次開業してゆくこととなったため、架線及び軌道の敷設まで完了した際には、検測車両を運び込んで試験を実施。問題がないことを確認してから、開業に向けた準備を進めていくこととし、全線開業前にもう一度、総合的に検査を行うこととした。

■保線工事
・レール及び架線の総取替え
・検査結果を踏まえて必要な部分の補修工事(高架橋の橋脚などは全て補強)
 車両を搬入・入線(延伸部分については、先に開業していた区画で使用されていて、運用上空いている車両)させて、乗務員訓練を兼ねた試運転を実施して、それが完了次第に開業していった。レールや架線の交換、そして高架橋の橋脚などの耐震性強化は、路線復旧工事と平行して行われた。
■営業用車両の調達及び車庫設置
 前世の鉄道線時代の車両は全てが既に廃車解体された後であり、営業に使用できる車両がなかった。このため、新たな車両を調達することとなったのだが、路線の復旧などに多額の費用がかかっているなど、簡単に新造ができる状況ではありません。そこで、車両の置き換えが進んでいた総馬電鉄日光急行線で廃車となった5000系車両を譲り受けることによって、暫定開業に備えることとなった。
 中部高速線用の車両は陸路で京神急行電鉄湘南藤沢工場まで運ばれ、塗装変更などを行った後、そこからは京神急行電鉄及び東静高速鉄道の線路を鉄路で東静浜松まで輸送され、東静高速鉄道浜松車両基地へ。そこから再びトレーラーで愛姫豊橋駅へと搬入された。最終建設区間である静都浜松〜愛姫豊橋が完成していれば、京神藤沢から全区間を鉄道輸送で運べましたが、そこは東静高速鉄道さんの都合がありましたので、仕方ありません。
 愛姫岡崎駅に隣接している岡崎車両センターは当初、電留線として使用される予定でしたが、検修設備及び洗車機などを設置し、暫定的な車両基地として使用されることとなります。最終的には岡崎車両センターという基地となりましたが、大垣総合車両センターが開設された地点で、所属車両は全て転属扱いとなり、現在所属車両は1両もありません。
 最終的には稲沢長野駅に隣接して稲沢車両センターを、愛姫大垣駅隣接で大垣総合車両センターを開設し、中部高速線車両はそこで管理されることとなった。そして、前述の岡崎車両センターは所属車両なしの車両基地となり、電留線が三河安城に隣接で設けられている。
 関西高速線の車両は陸路で東京港青海埠頭まで運ばれ、そこから兵庫県神戸市の摩耶埠頭までを船舶で運び、摩耶海岸通駅設置予定地にて鉄路へ搬入。先に搬入されていた入換用気動車によって、検修施設を新たに設置して車両基地とした住吉車庫及び六甲灘電留線へと搬入された。共に最初の開業区間にかかる場所となり、優先的に建設作業が進められたようである。  最終的に、関西高速線の総合車両基地として大淀総合車両センターが高速大阪〜愛高塚本間に開設となり、同時に隣接して大淀駅が開業。住吉車庫及び六甲灘電留線は大淀総合車両センターの支所となった。

■部分開業
 中部高速線最初の開業区間は静都浜松〜愛姫岡崎とし、建設が進んでいた湖西浜名湖駅の完成を待って開業することとした。また、関西高速線は最初の開業区間を愛高西宮〜愛姫明石とした。その際、当該区間に新設される予定であった摩耶海岸通駅及び明石朝霧駅と、復旧工事中であった愛高長田駅は開業に間に合わないことから、路線と同時の開業は見送ることとし、駅は建設工事が終わり次第、調節などが終わってからの開業となった。中部高速線は愛姫岡崎より先へ延伸する手はずで工事を進め、関西高速線に関しては西宮より大阪方面への線路を先に開業させることとした。

■工事区間
 部分開業を前提とし、様々な観点に視点を置いて検討を重ねた結果、中部高速線は岐阜羽島支線を含む全6区間、関西高速線は8区間に分けた。そうして工事を集中的に行い、部分的に開業できる箇所からの開業を行うこととしたのである。
中部高速線
1,愛姫豊橋〜高速名古屋 愛姫豊橋以東の区間は、東端の終点駅である静都浜松(東静高速鉄道管理駅)の開業に合わせての開業となった。
2,高速名古屋〜穂積長良川 (新駅)清洲枇杷島駅及び稲沢長野駅、名岐木曽川駅及び笠松薬師寺駅も開業。中間拠点基地として稲沢車両基地が稲沢長野駅隣接で開設
3,穂積長良川〜高速米原  愛姫大垣駅に隣接で大垣総合車両センターを開設。
4,(岐阜羽島支線)穂積長良川〜愛高岐阜羽島
5,高速米原〜高速京都
6,静都浜松〜愛姫豊橋 (新駅)湖西浜名湖駅開業。この区間を持って、中部高速線は全線開業。

関西高速線
1,愛高西宮〜愛姫明石  最も路線復旧工事に時間がかからなかったため、先行開業区間となった。この区間に新設される予定であった摩耶海岸通駅,明石朝霧駅,愛高長田駅は開業が見送られた。摩耶海岸通駅については、当時はまだ車両一時保管・搬入スペースとして駅建設予定地を使用していたため。
2,愛高西宮〜新大阪   新大阪〜愛姫明石 結ばれる。同時に開業が見送られていた明石朝霧駅,愛高長田駅と、中間拠点基地である大阪大淀車両センターを併設した大淀駅が開業
3,愛姫明石〜高速姫路  新大阪〜高速姫路 結ばれる。区間の新駅である播磨二見,播磨大塩,姫路四郷開業。
4,高速姫路〜高速網干  新大阪〜高速網干 結ばれる。現在、この区間まで開業。
6,新大阪〜高速京都   中部高速線の全線開業に合わせ、関西高速線も接続駅である高速京都まで開業。
5,高速網干〜高速相生  車両搬入スペース確保の関係で遅れていた摩耶海岸通駅、当該区間の新駅である太子岩見,揖保萩原,揖保川,那波野が9月1日に開業。
7,高速相生〜愛姫岡山  当初の計画上の全線は開業。しかし、計画上で延伸され、愛姫倉敷までを計画上の全線と改められた。
8,愛姫岡山〜愛姫倉敷  この区間の開業を持って、関西高速線は全線開業の予定。

■総合検査車両を用いて試験走行を実施
 関西高速線は接続する線路が無いため、他の営業用車両と同時に、総合検測車両を一緒に搬入。最初の区間開業の際、総合検測車両として、気動車タイプの2両編成の車両を先行して搬入。路線試験他、搬入された車両の入れ換えなどに使用。後に本格的使用となる総合検測車両として、廃車になった北大阪急行電鉄8000系ポールスターを改造、営業運転にも用いれることを前提とした6両に総合検測車両として改造された車両1両を挟んだ7両1編成が追加搬入された。最終的な開業に当たって、この車両を用いて検測を行い、路線に問題がないことを確認。

■中部高速線での試験
 区間開業で途中駅である愛姫豊橋駅を始点の駅として開業することとなった中部高速線は、検査車両を東静車輌工業より借り入れて試験を行いました。車両メーカーが検査車両を持っているというのは異例ですが、当初よりデモンストレーション車両として製作していたりするため、ほぼ容易なことだったといわれています。この検査車両は愛姫シティーラインの車籍を入れられ、車両搬入時などの入れ換え作業などにも使われるなど、縁の下の力持ち的な活躍をしました。この車両は中部高速線全線開業を見届けた後に除籍。東静車輌工業へ返却されました。当初は購入する提案もありましたが、全線電化の路線では必要のなかったことから、長期借入となった模様です。

■他社…東静高速鉄道より車両を借り入れて試運転実施(最終試験)
 中部高速線は始発駅を静都浜松駅としており、総合検測車両に関しては東静高速鉄道より借り入れ、静都浜松より検測を実施。線路に異常がないことを確認の後、浜松車両基地に留め置かれている営業用車両を使用し、試運転を実施。
・自社車両の搬入が完了次第、切り替えて試運転実施
・列車乗務員の運転士及び車掌、駅係員の研修

 現在、工事は進行中であるが、遠き未来の全線開業へと向けて、電車が走る区間より先では、路線工事が進められている。

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